今や釣りは細糸の時代である。クロ釣りがよりシビアになっている昨今、自分がイメージする釣りを組み立てるには、細いラインが欠かせない。 ラインが細いほど仕掛けが繰作しやすいのは周知の事実だ。飛距離が伸びるし、投入後のラインコントロールもずっとたやすくなる。
マキエとツケエを同調させることがクロ釣りには欠かせない現在、ラインにかかる風や波、潮の抵抗は極力排除しなければならない。でないと、ツケエとマキエははるかにかけ離れてしまう。 したがって、晴天無風のときはむろん、天候や海況によってさまざまな障害が出たとき、細糸は特に威力を発揮する。 言い換えれば、細いラインを使えば、より自分のイメージする釣りに近づけることができるのである。それならば、できる限り細い糸を使ったほうがいいのは当然だ。 このとき、できる限り細い糸とは、その釣場で想定できる一番型のいいクロを(自分の技術で)取り込めるぎりぎりの細さを指している。ラインの号数を設定するときは、常にその観点に立つ必要がある。
さて、細糸を使うにあたって、特に気をつけなければならないのが結びである。道糸から鈎まで仕掛け全体を眺めたとき、一番弱いのがラインの結びめになるのだ。 メーカーが保証している直線強度に比べて、結節強度はかなり落ちる。 なぜなら、ラインは、結ぶ際に生じる摩擦によって劣化するからである。厳密に言うなら、摩擦によって生じた熱がラインに悪影響を及ぼしているのだ。
現在、大半の釣人が、道糸はナイロンを使っている。これにカーボンハリスを結ぶのが一般的だ。しかし、カーボンはそれほどでもないが、ナイロンは非常に熱に弱い。したがって、注意しなければならないのは、特にナイロン側なのである。 この熱の発生を防ぐ手軽で効果的な方法が、ラインを結ぶときに唾で湿らせてから締めることだ。 つまり、唾の水分によって摩擦係数が抑えられ、熱の発生量が少なくなる。その結果、ラインの劣化をある程度防ぐことができるのだ。 もちろん、摩擦係数を抑えるためなら、唾にこだわる必要はない。ボナンザ・エルコートでもいいし、単に海水で濡らすだけも構わない。 といっても、鈎やサルカンを結んでいる最中に、わざわざ海水で濡らすのは面倒だ。それよりは、口にくわえるだけでいい唾のほうがはるかに簡単だ。
同じラインを使い、唾で湿らせて結んだものと、そうでないものを二通り用意する。そして、それぞれの強度を測定器で計ると、その差は数値にはっきりと出る。 もちろん、唾をつけたほうが強いことは言うまでもない。 これを念頭におき、ラインを結ぶ際は必ず唾をつけることをおすすめする。唾をつけるのは直結に限らない。サルカンに結ぶときも、また鈎を結ぶときも、さらにウキ止めを結ぶときも忘れずにやっていただきたい。 せっかく細糸を使っても、ラインが劣化していたのではなんにもならない。なんのための細糸か、それを考えたうえで、このような細かいことにも配慮してほしい。 唾をつけて結ぶというたったそれだけのことでも、みなさんが大グロをものにできる確率が高くなることは間違いないのだから。
* ラインを結ぶときに唾で湿らせるのは、そう面倒ではない。早い話、その癖をつけてしまえばいいのである。みなさんも仕掛けを作る際の自然な動作の一つとして、これをぜひやっていただきたい。 |
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釣りとは、こうした細かいことの積み重ねがものをいう世界なのだ。 |
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